第32章 長谷川栞は長谷川グループのお嬢様

車内で、中尾美希が身を寄せるようにして探る。

「蓮。……栞さんのこと、考えてた?」

中野蓮は小さな頭をくるりと戻し、怒らせたくないとでも言うように、ためらいがちにこくりと頷いた。

「ママに電話して、参観日に来てって言ったんだ。でも、ダメって」

悔しさの底に、ほんの少しだけ恨みが混じる。

中尾美希は、そのニュアンスを聞き取れなかった。耳に入ったのは、中野蓮という恩知らずが、まだ長谷川栞を想っているという事実だけ。

けれど蓮は賢い。彼の前であからさまに長谷川栞の悪口を言うのは避ける。

だから美希は、遠回しに、けれど確実に誘導した。

「栞さん、きっと忙しいんだよ。お仕事してなくても...

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